It's a small war

きみと僕とのあいだに起こる とるにたらない 小さな諍い

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90年おつかれさまでした

わー久々の更新です。
過労死寸前で毎日がんばっていまーす!
しかし骨董の道は人を狂わすケモノ道、つられて人形熱もきわまって、お店にいる100年前の福助さんをお迎え寸前です。造形とメイクが超好み、と関節もない土人形に対して思う日が来るとは思いませんでした。


スロー更新のさなか拍手押して下さる方、ありがとうございます。
人形を出して写真を撮る時間がなかなかなく、寸劇はしばらくお休みになりそうです。

コメントくださった方、お知り合いの方にはコメント返しやメールで失礼しました。今後もフラフラ現れますのでよろしくです!
返信不要※つきメッセージの方、お名前は分かりませんがお気遣いありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますね!


***

さて


大事にしていたおもちゃの古いレジスターが壊れてしまいました。

ブリキでできていて、カラシの缶のような黄色で、黒いインクでスタンプされた数字が並ぶおなかは大胆に丸くカーブし、回すとチリンとベルの鳴るクランクハンドルと、赤いレバーがついています。

クランクハンドルを回してからレバーを引くと、お金を入れる赤茶色のトレイが飛び出してくるようになっていて、そのギミックはややくたびれてきているものの、古さと小ささのわりに、凝った作りのおもちゃです。

ところがきのう、調子はどうかなと久しぶりにクランクを回してみたら、前々から少しぎこちない気のしていた部分で、ばしゃっと嫌な手ごたえがあり、そのあとは急にクランクがクルクルと軽くなってベルが鳴らなくなり、レバーを引いてもトレイが出てこなくなってしまいました。


・・・というような、お人形にはあまり関係ないような、ちょっとはあるような話です。


このレジスターがうちに来たのは去年の夏です。

秋のドールショウで40cmサイズのお人形に合わせたカフェのセットを展示することになり、私は家具の担当になりました。
少し古い感じの雰囲気にしたかったので、人形の背丈ほどあるキャビネットをこしらえたり、近くの小学校からもらってきた廃材でカウンターを作ったりしていたのですが、そのうちどうしても、店の中に大きな昔風のレジスターを置きたい、とうか、置かなくてはいけない、と思うようになりました。


(↓製作中のキャビネット)

cupboard1.jpg




(↓完成したカウンターごしに人形を立たせてみた)


921set01.jpg



こんな感じに合わせるとなると、ドールハウス用のものは小さすぎてダメ。たまに雑貨屋さんで見つける鉛筆削りや小物入れにもレジ型のものはありましたが、たいていデザインが古めかしすぎたり、作りや材質がポップすぎたりして気に入りません。

あれこれ探して、雰囲気やデザインが思っているのと近かったのは、50年くらい前まであちこちの国で作られていたブリキのレジスター。これは手に入れやすい値段でたくさん見つかりましたが、問題は大きさでした。
私が欲しかったのは手のひらに乗るくらいのレジなのに、こういうおもちゃは子供が実際に使って遊ぶように作られているため、小さなものでも普通は20cm四方くらい。そうなると人形にはとても大きすぎるのです。

カラシの缶の色をした小さなレジスターを見つけたのは、たまたま覗いたアンティークの貯金箱を専門に扱うお店でした。

今からおよそ90年前、ドイツで作られたというその貯金箱は、その由緒ある(?)来歴に反して、ほとんど奇跡としか思えないほど40cmのキャストドールにぴったりのサイズでした。
大胆に大きくカーブしたブリキのおなかを見たとき、知識の乏しい私の頭から、いまだに正体不明の「アール・デコ」という言葉が沸いてきて、まさにそれがしっくりくるデザインだと思いました。

「25年もの間、古い貯金箱の専門店をやっているが、これと同じものは一度も見たことがない。
きみの貯金箱コレクションにこれを加えたら、コレクションはさらに素晴らしいものになるだろう」

とお店の主人は言いました。
私は、彼が25年ものあいだ古い貯金箱の専門店を経営してきた事実に驚愕しつつ、「残念ながら自分は貯金箱のコレクターではない」ということを説明しなければなりませんでした。

「じゃあきみは、これを買って一体どうするの」
「いまお人形用のお店を作っていて、そこのレジに使うんです」
「へぇー。人形のお店。ほぉー。」

古い貯金箱コレクター向けの商品であるカラシ色のレジには、人形用の小物に払うにはかなり勇気のいる値段がついていました。
しかし、当時の私は「40cmキャストドールのためのシャビーシックなカフェ」を作ることにほとんど病的な情熱を燃やしていたので、大して逡巡もしないでそれを買い求めました。

そして、そんないきさつは誰にも話さないで、無事にドールショウを終えたのでした。(ちなみに展示中、誰もレジを褒めたりしませんでしたが、私は自分が心から満足していたので、ぜんぜん平気でした)



そのレジスターが壊れてしまいました。


直せるものなら直したいけれども、90年も昔の古いブリキを分解するのはかなりな冒険です。
万が一取り返しもつかないほど壊れてしまったら? 
この先お金に困って金目のものを処分しなければならなくなったとき、この貯金箱が無事なら良かったと後悔するのでは、といったことまで心配しました。

が、よくよく考えると、自分がそこまで窮乏している場合は、貯金箱の代金程度では事態はどうにもならないであろうことに気が付きました。

そこで、おそるおそるヤットコで本体底のブリキのツメをそっと広げ、レジスターを上下に分解して中を見てみました。

すると、ほこりのついた錆びかけた歯車や、歴代の持ち主が何度も遊んだせいでそこだけピカピカに磨り減ったレバーの裏側の押さえ金具の奥に、螺旋がびよびよに伸びた、一本の古いバネが挟まっていました。
トレイとレバーの間についているはずのそのバネが外れ、中に入り込んで絡んでしまったのが、故障の原因だったようです。

私は隣の部品に巻きついて伸びてしまったくたびれたバネを辛抱強くピンセットで外しました。
そして、道具箱からこのバネの材料と同じような太さの針金を探し、丸いペンの軸にグルグルと巻いて新しいバネをつくり、ここかと思われる場所に取り付けて、本体を組み立てました。

ヤットコで元通りツメを閉じ、机にレジスターを置いて試しにクランクを回すと、チリンと澄んだ音のベルが鳴り、レバーを引くと、赤茶色のトレイは今までの倍も勢い良く飛び出してきました。


私は深く満足し、誰が得したわけでもないのに、ものすごくいいことをしたような気持ちになりました。
壊れたレジを自分で直した瞬間、この90歳のレジがほんとうに自分のものになったような気がしたのです。

古いバネ、ほんとうに90年もお疲れさまでした。




09051901.jpg

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